2017年4月5日水曜日

イギリスの薬局で働く その9



イギリスの医薬品は主に3段階に分類されています。

GSL : General Sale List Medicines 薬剤師がいないスーパーなどでも購入可能
P : Pharmacy Medicines 薬剤師のいる薬局で購入可能
POM : Prescription Only Medicines 処方箋取り扱いのみ

私の勤めていた調剤薬局は、Pの薬をアクリルのロックのかかる箱に展示して、そこには「店員に声をかけてください」とのメッセージが書かれていました。
なので、中に入っている薬が必要な場合は、店員を呼んで商品を取ってもらう必要がありました。
大抵の薬局ではPの薬はカウンターの後ろに陳列して、購入するときに店員にとってもらう形をとっているところが多いです。

イギリスのどの薬局でも悩みの種・・・、万引きが絶えないこと。

こんなことがありました。

とても忙しかったある日、薬局を閉めるまえにお店をグルーっとまわってみていたら、「リゲインの入っている箱がない!」
そう、ロックが開けられず、箱ごと盗まれていました。コレにはマネージャーさんもびっくり。
相手もやるものです。

よく盗まれるものの中には風邪薬があります。
この中に入っている成分がドラッグを作る原料になるため、商品を買う際には1日総量○mgまでなど買う量に制限があります。
なので、普通に大量買いをすることはできないため、一気に盗むことにつながってしまうようです。Pの箱に入っているのですが、うまくロックを開けられて、盗まれていることもありました。

そのほかにはスキンケア、メイクアップ、化粧品関連。朝の静かなときに品出しして、きれいに陳列しておいたのに、一日の終わりに見てみたら、棚ごとごっそり盗まれていることがありました。
これらはオンラインなどで転売して、お金を稼いだりするために使われていることもあるようです。

また、堂々とした万引きもありました。スーツを着た若いサラリーマン風の男性が、
「すみません、これって下痢止めですよね。一日何回まで使えるんですか?」
「○回までです。」
「そうですか、ありがとうございます。」
と言って商品を持って堂々と店を去って行きました。その後、同僚に
「あの人の会計した?」
「してないよ」
あー、やられたー・・・なんてこともありました。
目の前には処方箋持込の長い行列があるため、なかなか店まで目が行き届きません。

こんなこともありました。
いつもどおり、とても混んでいて忙しいとき、マネージャーさんが
Hiroko、車椅子どこにいったの?」
「え?」
行列の後ろに陳列されているはずの車椅子の1つがなくなっている!!!
薬局には介護用品をはじめ、車椅子、電動スクーターなども陳列してあります。
監視カメラを二人でチェックしていると、中年女性が普通に車椅子を持ち出している姿が映っていました。
マネージャーは
「病院の出口まで行って見てみる」
と言って、出て行きました。
長い行列がやっと短くなってきたところで、女性が雨にぬれた車椅子を置いて去って行きました。
「マネージャーが女性を見つけて返却させたんだ」
と思っていました。
マネージャーが帰ってきて
「あれ?車椅子どうしたの?」
と聞いてきて、
「え?女性を見つけて返却させたんじゃないの?」
思わず二人でおかしくて笑ってしまいました。

薬局の構造が問題にあると、マネージャーも薬局を立ち上げるときに本部に散々交渉したのですが、そこは認められず、万引きとはいたちごっこで、いろんな工夫をしました。

その後、車椅子などのディスプレイはチェーンで商品を繋げてロックし、一段高いところに置いて、周りにロープで囲いを作りました。

お客さんで時々見かけて報告してくれる方もいるのですが、あとは追わないほうがいいと言われています。もしかしたら刃物などの凶器を持っているかもしれず、お客さんやスタッフのことを考えるとそのほうが安全だからです。

思いもよらない出来事がいろいろあって、ある意味刺激のある毎日でした。